【短編】ショートメッセージ
『沙羅は、忙しかった? だったら、ごめん』

私は、今しがた受け取ったメールを読んで、忘れかけていた現実を思い出した。少しだけ、チクリと胸が痛む。

『忙しくなんてないよ。家に帰れば一人だしね。寂しい大人なのです(笑)』

平常心を思い出しながら、自虐的に答えた私は、彼がどう慰めてくれるのか、ほんの少し期待していた。

『僕たち、似た者同士だね』

(…あぁ)

私は、ハッとした。

そうだ。そうだった。

寂しいから、こんなことしてるのか…

『そうだね。私たち、似てるね』

そう返さずにはいられなかった。

『でも、沙羅にいい人ができたら、すぐにメール送るのやめるから、言ってね』

「なっ…」

私の口から、思わずそう漏れていた。

『しばらく誰かを好きになんてなれないよ。もう、恋したいなんて、思えないんじゃないかな…』

正直に今の心境を文字にした。

実際にそうだった。

自分に何かが足りなくて、彼の心が離れてしまったのだろう。私に何が足りなかったのか、何が決定打だったのか、未だに解らないのだ。

もちろん、完璧な人間ではないから、自分に全くの落ち度が無かったなんて思わないけど…
 
彼の心に隙を与えてしまったのは、変えることのできない事実だった。



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