この家に他の男と住んでいます。


「百合。」


隣から低い声がした。

そうだ。私は1人じゃなかった。


私には彼氏がいるんだ。


友達はいない。
でも、彼氏はずっといる。

大学に入ってからずっと。

同じ人じゃない。

私は…今まで色んな人と付き合った。


大学に入って少しメイクをしただけで、男によく声をかけられるようになった。

そして告白される。


私のどこがいいの?
なんて聞かない。

だって、ちゃんと話してもいないのに内面のことを言ってくれるわけがない。

その証拠に付き合ってから必ず言われることが、無口だねとか静かだねとか冷めてるね、とか。


どうせ見た目。
メイクで少し着飾った私。


そして、別れる理由はいつも同じ。

男は全て狼、という話は正しいと私は思う。

付き合って何日か、もしくは何週間かすれば、みんなこう言う。


「ねぇ、百合の家行っていい?」




私の地元は引っ越し前のここからは遠いところ。

それを知った男はみんな思う。

私は1人暮らしだと。


だから、私の家の前まで一緒に行く。

ここで私は必ず同じことを言う。


「私…この家に他の男と住んでいます。」


冗談じゃない。

本当のこと。



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