河の流れは絶えず~和泉編~
「行こう。」

暗くなった座敷を出て、俺達は階下へと降りていった。

さっきのことなどまるでなかったかのようにおじさんとおばさんに礼を言って、店を後にした。

家の近くまで送っていく間、終始無言だった。

胸の高鳴りが治まらなくて気持ちを落ち着けるのに精一杯だった。

彼女の家から一番近いという曲がり角まできて、

「今日はありがとうございました。」

と彼女は言った。

俺も精一杯のやせ我慢で

「じゃあ、また明日。おやすみ。」

そう言った。

けれど、なかなか帰ろうとしない。
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