河の流れは絶えず~和泉編~
「あいよ、今持って行くからさ、上へお上がりよ。これ、正吉!正吉!」

と正坊を呼んだ。

すると、

「え、あんた、ここの子なの?」

彼女は言って、びっくりした。

正坊とくればにやりと笑って

「うん、そうだよ!おねえちゃん、このあいだはありがとう。」

にこにこしていう。

そういや、また彼女に会いたいと言っていたっけなあ、うれしそうだ。

「正吉、兄さんたちを部屋へ案内しておやり。」

と自分の母親に言われて、

「わかってらい!兄ちゃん、おねえちゃん、どうぞ!」

と先頭を取って案内してくれた。

正坊が下がってから、

「今日はちょっと暑いね。障子を開けよう。」

そう言いながら、障子を開けた。

女と部屋に二人きりになるのはこれが初めてだったので、何となく気恥ずかしい。
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