囚われの歌姫
「ま、行こっ?」
しばらく透って人の背中を見ていた彼女が、すぐさま私に視線を返して笑った。
――いつぶりかな。
中学の頃はほとんどが颯人と一緒で、あんまり、というか全然女の子同士の友達はいなかったから。
小さいときには、私が″ある仕事″をしてた時には一人だけいた。
よく、覚えてはないけれど。
「梨亜ちゃん?」
「えっ、あぁ」
「ボーッとしてちゃ遅れちゃうよ?」
早く早く、と急かされて後を付いていく。
道、とかわかんないし。
置いていかれたらきっと迷う。
「待って」
ぱたぱたと小走りで文音ちゃんの元へと向かう。