囚われの歌姫




「ま、行こっ?」

しばらく透って人の背中を見ていた彼女が、すぐさま私に視線を返して笑った。




――いつぶりかな。



中学の頃はほとんどが颯人と一緒で、あんまり、というか全然女の子同士の友達はいなかったから。

小さいときには、私が″ある仕事″をしてた時には一人だけいた。
よく、覚えてはないけれど。



「梨亜ちゃん?」


「えっ、あぁ」


「ボーッとしてちゃ遅れちゃうよ?」




早く早く、と急かされて後を付いていく。


道、とかわかんないし。
置いていかれたらきっと迷う。




「待って」



ぱたぱたと小走りで文音ちゃんの元へと向かう。





< 10 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop