囚われの歌姫
文音ちゃんは学校を把握しているのか、道を躊躇う素振りすら見せない。
二階から階段を下に降りて、一階から、保健室とか色んな教室を通り過ぎて体育館に向かう。
……にしても、校舎が広いすぎる。足が疲れた……。
文音ちゃんは体育館をさらに少しだけ奥に向かう。
体育館の中じゃなくて……?
気になって聞いてみた。
「……体育館に入らないの……?」
「あれ、聞いてない? 新入生は入場しないといけないんだけど……」
「…………、あぁ」
納得。
ちょっと恥ずかしい……。
おとなしく付いていくと、新入生が沢山いる。
あのまま入っていたらどうなっていたか……。考えただけでゾッとする。
ありがとう、文音ちゃん。
心の中で呟く。
「梨亜っ」
「うわっ、は、颯人?」