妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
---どうしたもんかな---

 そはや丸は、ここ二百年ほどは、この場所に据えられていた。
 このような寂しい土地、誰も近づかない。
 あまりに強い妖気を放つため、恐れた人間が僧に頼んでここにそはや丸を据えたのだ。

 初めは封じの術をかけられていたかもしれない。
 だが所詮はヒトの施したモノだ。
 尋常でない妖気を纏うそはや丸を、ずっと封じることの出来るものではなかった。

 が、特にそはや丸は、動くことなくここにいた。
 そもそも刀である。
 自力で動くことなどなかった。

 この地は二百年経った後も、そはや丸の放つ妖気のせいか、ヒトの住む土地にはならず、死体が打ち棄てられ、魑魅魍魎の跋扈する葬送の地になったのだ。

---ヒトか。近づくのは久しぶりだな。にしても、いくら白蛇が呪を施したところで、ヒトなど取り憑いた瞬間に死に絶えようものを---

 呉羽の隣で、刀のそはや丸は考えた。
 あの白い物の怪は、この洞窟に住み着いていた白蛇だ。

 少し前に、何を思ったか赤子を抱いてきた。
 どこぞで拾ったのであろう。
 良い感じにまで育てて食うのは、物の怪にはよくあることだ。

 が、白蛇は赤子を食うことはせず、普通に育てていた。
 それを、洞窟の奥で、そはや丸も見ていたのだ。

---まぁいい。ここでずっといるのも、いい加減飽きた。こいつが耐えられれば、それはそれで面白い---

 そう思い、そはや丸は傍らの右腕に向かって、妖気を叩き込んだ。
 物凄い光が、洞窟内を照らす。

 同時に、そはや丸は人型を取った。
 そのときが、そはや丸が人型を取った、初めだった。
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