妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「お前は刀で行くか。女官殿を、いきなり斬ったりするんじゃないぞ」

 刀になったそはや丸を掴み、呉羽は己の腰にそれを差した。

『あの女官などどうでもいいが、何とかしないと、お前に危害が及ぶかもしれん』

「何故?」

 烏丸を抱き上げ、肩に乗せながら、呉羽はそはや丸に問い返した。
 肩の上で、烏丸がばさばさと羽を動かす。

「だってほたるさんは、そはや丸を想う余り、物の怪憑きになっちゃってるんでしょ? そはや丸がお姉さんを想ってるのなら、ほたるさんはお姉さんを恨むよぉ~?」

「・・・・・・」

「源氏物語にもあるじゃない~。光る君を想う余り、生き霊になって光る君の正室を取り殺しちゃうのよ~。女の人は怖いねぇ」

「それって、どうやって鎮めたらいいのかな。何かが憑いてるわけじゃなかったら、苦手な分野になってしまう」

 護摩を焚いての祈祷だろうか、と考えつつ、呉羽は眉間に皺を刻んだ。
 そのようなまじないの類、呉羽の最も苦手とする分野だ。

「まぁいいや。何とかなるだろう。とりあえず、様子を確かめないと」

 そう言って、呉羽は待っていた右丸と一緒に、左大臣家への道を急いだ。
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