妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
第十章
 程なく蓮台野まで帰り着いたそはや丸は、衾を広げて呉羽を下ろした。
 躊躇いなく呉羽の帯を解き、衣を開く。

 白い肌が、血に染まっている。
 そはや丸は手早く水を汲むと、布を絞って血を拭き取った。

 冷たい布が肌に触れた瞬間、呉羽が目を開けた。

「ちょっと我慢しろ。今回の傷は、前と違って小さい。とっとと拭いちまったほうがいい」

 小さく頷き、呉羽は顔をしかめた。
 少し身を捩る。

「・・・・・・痛っ・・・・・・。傷よりも、骨が・・・・・・」

「骨だと?」

 そはや丸が、呉羽の胸に手を当てる。
 途端に呉羽が、びく、と身体を強張らせた。

「冷たっ・・・・・・。あ、痛たたた」

「しょうがねぇだろ。俺には体温がねぇんだから。ほら、大人しくしろ」

「うう・・・・・・。そ、それにしても、この寒空の下を駆けてきた後のお前はきつい。ちょっと待って・・・・・・」

 冷え切った空気の中を疾走してきたそはや丸は、まさに外気と同じ冷たさだ。
 素肌にそのような冷え切ったものを当てるのは、心の臓に悪い。

 呉羽はそはや丸の手を取ると、己の手で包み込んだ。
 そして、息を吹きかける。
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