妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「何とも思ってない殿方と、閨を共にするなど! やはりあなたは、そういうお人なのではないですか?」

「ほたる様! 呉羽様は、そんなかたではありません!」

 掴みかからんばかりの勢いで言うほたるに、右丸が思わず口を挟む。
 そんな右丸をキッと睨み、ほたるは立ち上がった。

「わたくしは、そはや丸が好きです! 彼も、わたくしに会いたいがために、左大臣家にまで来たのだと言ってくれました。だからこそ、わたくしも身を任せましたのに・・・・・・」

 一気に言うと、ほたるは、さっと裾を捌いて出て行く。
 右丸が慌てて腰を浮かし、呆気に取られて固まっている呉羽と、ほたるが去った後を、きょろきょろと見比べた。

 慣れぬことの連続で固まっている呉羽は、傍から見たら、非常に頼りなげに見える。
 行き場を失った幼子のように、ぺたんとその場にへたり込んでいる呉羽をそのままにしておくのは出来かねるが、右丸の主筋はほたるである。
 それに、右丸がいなければ牛車も動かせまい。

 右丸は、ずいっと呉羽に近づくと、ぎゅっと彼女の手を握りしめた。

「呉羽様。ほたる様の非礼は、わたくしが詫びます。あの、どうぞ、お心落としのないよう・・・・・・」

 そこまで言って、右丸は、呉羽の手を握った己の手に、力を込めた。

「わ、わたくしは、呉羽様をお慕いしております」

 早口で言い、がばっと頭を下げると、そのまま呉羽を見ずに、右丸は部屋を飛び出して行った。
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