How to KISS


 その後バスローブに身を包む男と対照にブラックのバルーンドレスを身に纏い直す私に、

 どうして着替えるんだい?おはようのキスは愚か、おやすみのキスもまだだよ?

そんなバースデーケーキのチョコプレートのような言葉を半刻ほど吐かれ終えたのが、今からちょうど17分と42秒遡ったところだった。


 そして17分と47秒後の今、男は顔を傾け(この絶妙な角度を当たり前に生み出す理由はひとつに違いない)、吸い込まれそうな真っ黒な瞳に蓋をした。

その瞬間、私はからだをタクシーに引っ込めたし、ドアをホテルマンが閉めてくれるのを待たずに自分で閉め、ロックをし、運転手にすぐにこう言った。

「Right now!(ライナウッ!)」

艶やかなブロンドの運転手は一瞬目を大きくしたが、すぐに、

 承りました、魅力的なお嬢様。

その言葉とウインクをくれるとともに、発車してくれた。

そんなブロンドの男はなかなか素敵な容姿をしていたから、フィッシュアンドチップスのフィッシュと共に時間を過ごしていなければ、バラが私を待っていなければ、「行き先は天国へ。新しくできたばかりの噴水が素敵なホテルを経由で」と私の唇は動いていたに違いない。

ああ、なんてもったいないの。


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