あなたがいたから
教室から出てきた未来は溜め息をつきながら廊下を歩いていた。



あの教室なんか嫌だ。息が詰まる。
つーか、もっと静かに出来ないわけ?



未来がそう思っていると智佳が話し掛けてきた。

ハアハアと息を弾ませながら。



「未来ちゃん…ちょっと、待って…早い。」


智佳の言葉に未来はその場で立ち止まった。


未来が立ち止まったおかげで智佳はやっとのことで未来に追い付くことができた。



「で、なんなの?あたしのあとを追い掛けるように走ってきて。」


未来が冷たい口調で言う。


智佳はまだ息を弾ませながら、


「未来、ちゃんが…心配、だったから。
…何か、怒ってる…みたいだったから。」


「あたしが…怒ってる?
そんな…わけ、ない…ね。」


智佳の的を射った言葉に未来はたどたどしく答える。


そんな未来を見て、智佳は笑いながら、



「ふふ。未来ちゃんってわかりやすすぎ。それにね…」


智佳は一呼吸をする。


智佳の顔をよく見ると智佳は笑っていなかった。


むしろ、真剣な顔だった。


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