ひな*恋
「…だけど、そろそろいい加減本気で考えてくれなきゃだめよ」



「んー?」



余り物のコロッケにソースを垂らして箸で一口大に割ると、それをわざと上の空で聞くような返事をした。


だってお母さんが何を言おうとしているか、もうわかっているから。



「あんたももう29になるでしょ!
早くお婿さんを見つけて、お母さんを安心させてちょうだいよ」



「ん…」



お母さんと話をするのは好き。
時折ジョークなんかも交えて笑ったりなんかも、実の母娘だからできるんだとさえ思っている。


だけど、こういう話だけは苦手。

何て言うか、恥ずかしいって言うか反応に困るって言うか…。


28なんて立派な大人な年齢だけど、どうしても鏡に映る自分を見るとまだまだ子どもな気がして、結婚なんてありえないって思ってしまうの。


実際、男の子と付き合った事すら一度もない。




…だからもちろん、この28年間、あっちの方も未経験ですけどね。




< 16 / 322 >

この作品をシェア

pagetop