ひな*恋
「そうだ、あんたの成人式で撮った写真。
あれをお見合い写真にしてみようかしら」



「ブッ!」



お母さんの急な発言に、私は口に入れたコロッケを吹き出しそうになった。



「い いきなり何て事を言うのよ、お母さんはぁ!」



「あぁ、もう古すぎて無理があるわよねぇ。
せっかくの晴れ着姿が勿体ない気もするんだけど」



…いやいや。
今も二十歳の時も、さほど変わらない顔をしてますよ。

むしろそれを見たお見合い相手の人が、聞いていた年齢と写真の顔が違うじゃないかと文句を言いそうだわ。

…で実際の本人は写真と変わらなくて、逆年齢詐欺だって言われるのよ。



あーあ。

童顔なだけでこんなにも自虐れるんだから、ホント笑うしかないって感じよ。


なんで私は年相応に老ける事ができなかったんだろう。


一度でいいから、「おばちゃん」って呼ばれてみたいわ。


いや逆に、一度しか呼ばなくてもいいんだけど。




「ごちそーさま。
お風呂入るね」



箸を置いて手を合わせると、私は逃げるように食卓から離れた。



「着替えとタオルは用意してるから」



「ありがとー」





だけどこんな私でも、いつか結婚できる日が本当に来るのかなぁ…。














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