あの頃のように
本人は「お父さんの影響」なんて言ってたけど、もしかするとそれも狙っていたのかもしれない。

俺がユカに興味を持つように。


強いのは経済だけかと思いきや、ユカの話題は多岐にわたっていた。

普通の会話に、世界情勢や歴史、はては哲学、文化論、いろんな分野の話題がシームレスに混じる。

さまざまな分野でユカは一定の知識と見解を持っていた。

かといって、知識をひけらかすような嫌味もなく。

彼女にとってはごく普通の話題なんだろうと思える自然さだった。


そんな子は男女問わず今まで身近にいたことがなかったから、あまりに新鮮で、いつも驚き、感心していた。


(こんな女の子もいるんだな)


少女めいた見た目とのギャップでいっそうそれは魅力的に映り――

気がつくと俺は、すっかり彼女に夢中になっていた。


(俺なんて引っ掛けてないで、銀座でも行けばナンバー1になれたんじゃないか。

どんな客にも的確に話題を合わせられる。

あっという間に人気者になるだろうよ)

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