不器用な愛を.




「………風邪ひく。」


そう言って
私を車に乗せようと腕を掴む聖斗。



これが聖斗だ。

優しくたって甘くはない。


その優しさで聖斗の気持ちは伝わるし、私はこれで満足だった。

彼のこの、分かりにくく暖かい愛情表現で私は幸せだった。




…なのに、なんでかな。



予想通り。いつも通りの聖斗に、今は何も満たされない。
今にもなにか大きなものに押し潰されそうで。



「……すきって言って」


言葉で。聖斗の声で伝えてほしい。



一言でいい。それだけでいいから。

そうしたら素直に帰るから。


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