Hurly-Burly 5 【完】
ウチの兄ちゃんは人騒がせなんだよ。
彼女に呆れられてるって自覚させた方がいいに決まってる。
菜南子先生、ウチの兄ちゃんなんかのどこが良かったんだ!?
「透真には日和ちゃんを困らせないように言っとくわ。」
菜南子先生はお姉さんみたいで何だか嬉しい。
もしも、あたしにお姉ちゃんが居たらこんな
ふうに仲良しだったのかなって思う。
「透真さんって日和以上に苦労しそうね・・・」
今、ボソッと聞き捨てならんこと言ったな!
兄妹揃って永瀬家の兄妹にお世話になってますよ。
しかし、絶対に兄ちゃんほど迷惑かけてない!
あんな危険人物と一緒にされては困るよ。
「あら、でも、真君は透真のこと操るの上手よ。」
そんな内部な事情までご存知とはさすが
兄ちゃんの彼女やってるだけある。
3年も付き合ってればそれぐらい寛大になれるのかもしれない!
兄ちゃん、本当に良い人見つけたね。
釣った魚は大きいぞ!逃がしちゃイカンよ!
「菜南子先生ってここに来る前はアメリカの
方のスクールカウンセラーしていたんですよね?」
サユがふと思い立ったように質問する。
「そうよ?」
ハンドルを握る菜南子先生は軽やかに運転してる。
兄ちゃん、彼女が運転出来ちゃってるじゃないか。
早く免許取りに行くべきよ!
のび太君だって取れたんだから兄ちゃんなんて
一発で合格するはずだよ!
頭はいいんだから多分取れるはずよ。
「私は、カルフォルニアの方の大学で
心理学の助手もさせてもらってたのよ。
その合間にスクールカウンセラーの方も
任されていて随分勉強になったわ。」
カルフォルニアってお兄ちゃんの居るロサンゼルスの州。
「朔夜さんに会ったことはあるんですか?」
「あるわよ、彼は有名人だから元々知ってたのよね。」
「お兄ちゃん、元気にしてましたか?」
もうずっとお兄ちゃんに会ってない。
どんな顔をしてるのかも分からない。
あたしの記憶の中に居るお兄ちゃんは、
いつも優しく見守ってくれる人だった。
あたしが困ってるとすぐに気づいてしまう人だった。