Hurly-Burly 5 【完】
ただ、普通の家族が欲しかった。
その中で普通に幸せって呼べるものがあると思ってた。
親父が全ての普通を奪ってく。
泣きじゃくる俺にぐったりした兄貴が手を伸ばした。
「痛かったろ、守ってやれなくて悪かったな。」
兄貴のせいなんかじゃない。
それなのに、自分のせいだと言う。
家族の破壊が目前に迫ったのはそれからすぐのことだ。
今回の兄貴は相当ダメージを負ったらしく、
熱を出して寝込んだ。
それまでは一度も風邪なんて引かないで健康体だった。
俺の方がしょっちゅう風邪ひいてた。
だから、母さんに病院へ連れてかれるのを最後まで抵抗した。
行きたくねぇって喚いてた。
病院の診察を受ける際に、医者に体を診てもらった
際に痣だらけの体をここで初めて見られた。
医者が大慌てで風邪の表情よりも折れた肋のこと
で忙しく慌てふためくのを母さんは放心状態で見てた。
兄貴は頑なに痛いって言わなかった。
ずっと歯を食いしばって我慢してた。
そんな兄貴を見て泣きたくなったけど、
泣きたいのはきっと俺なんかよりも兄貴の方だった。
それが分かったから絶対に泣くもんかって思った。
その日から、兄貴は入院した。
そして、母さんと俺は家を出た。
兄貴の荷物も持って地獄の日々だったところから。
母さんは何も聞いいてこなかった。
多分、聞いても俺も兄貴も何も言わないのを
分かっていたからだと思う。
昔、母さんが、「武君も成君のことも母さんは何でも知ってるのよ。」
そう言ってたからだと信じたい。
だけど、兄貴が入院してしばらく経った頃だった。
「成君、お母さんね。何も知らなかったね。
武君も成君も痛い思いしてたのにお母さん失格だわ。
もっと早く気づいたら2人を守ってあげられたのに。」
そうやって、涙を流す母さんを今度は兄貴の代わりに
守ってやらなきゃと思った。
もう兄貴だけが辛い目にあうようなことはさせない。
兄貴は俺のことも母さんのことも1人で守ってた。