Hurly-Burly 5 【完】

ただ、普通の家族が欲しかった。

その中で普通に幸せって呼べるものがあると思ってた。

親父が全ての普通を奪ってく。

泣きじゃくる俺にぐったりした兄貴が手を伸ばした。

「痛かったろ、守ってやれなくて悪かったな。」

兄貴のせいなんかじゃない。

それなのに、自分のせいだと言う。

家族の破壊が目前に迫ったのはそれからすぐのことだ。

今回の兄貴は相当ダメージを負ったらしく、

熱を出して寝込んだ。

それまでは一度も風邪なんて引かないで健康体だった。

俺の方がしょっちゅう風邪ひいてた。

だから、母さんに病院へ連れてかれるのを最後まで抵抗した。

行きたくねぇって喚いてた。

病院の診察を受ける際に、医者に体を診てもらった

際に痣だらけの体をここで初めて見られた。

医者が大慌てで風邪の表情よりも折れた肋のこと

で忙しく慌てふためくのを母さんは放心状態で見てた。

兄貴は頑なに痛いって言わなかった。

ずっと歯を食いしばって我慢してた。

そんな兄貴を見て泣きたくなったけど、

泣きたいのはきっと俺なんかよりも兄貴の方だった。

それが分かったから絶対に泣くもんかって思った。

その日から、兄貴は入院した。

そして、母さんと俺は家を出た。

兄貴の荷物も持って地獄の日々だったところから。

母さんは何も聞いいてこなかった。

多分、聞いても俺も兄貴も何も言わないのを

分かっていたからだと思う。

昔、母さんが、「武君も成君のことも母さんは何でも知ってるのよ。」

そう言ってたからだと信じたい。

だけど、兄貴が入院してしばらく経った頃だった。

「成君、お母さんね。何も知らなかったね。

武君も成君も痛い思いしてたのにお母さん失格だわ。

もっと早く気づいたら2人を守ってあげられたのに。」

そうやって、涙を流す母さんを今度は兄貴の代わりに

守ってやらなきゃと思った。

もう兄貴だけが辛い目にあうようなことはさせない。

兄貴は俺のことも母さんのことも1人で守ってた。


< 322 / 415 >

この作品をシェア

pagetop