Hurly-Burly 5 【完】
似てるって言われるのが好きでよく質問しに行った。
容姿は全然似てないって友達に言われたけど、
似てるところはあるよなって言われるのが嬉しかった。
5年間、そんな生活を過ごした。
学校では友達もいっぱい増えて、
俺に悪さをしようとする奴は兄貴が懲らしめてた。
家では、父さんから傷つけられながら俺を守って、
兄貴の体も心も限界を超えていた。
実の父親から殴られることがどれほどの恐怖かを
俺はきちんと知らなかった。
待ってることは出来てもそこに立ち入ることは
出来なかったからだ。
兄貴が絶対に殴られるところを俺に見せなかった。
いつも殴られる時は別室で俺は早く終わってくれよって
願うしか出来なくて恐怖に怯えてた。
だから、ある日部屋の隙間から見てしまった時は泣いた。
痣が無数に出来た体を平気で痛めつける親父に
兄貴が歯を食いしばって耐えてた。
俺があの夜解放されてからはずっと兄貴が身代わりになって
俺を必死に守ってくれてた。
それを俺は兄貴の体があんなにボロボロになるまで
気づくことが出来なかった。
兄貴が人の居ないところでしか着替えないことを知ってたのに。
兄貴が長袖しか着ないのを見てたのに。
俺はずっと守られてた。
「もうやめてくれよ!!父さん、もう兄ちゃん
殴んないでくれよ。頼むよ、俺何でもするから!」
泣きながら部屋に駆けつけた俺を兄貴が
力なく馬鹿と言ってた。
「成、お前は向こうに行ってなさい。」
「俺が女の格好してればいいんだろ?
兄ちゃんを傷つけるのは俺が許さない!」
泣きながら何でもしてやるよと覚悟を決めた俺は、
次の瞬間初めて親父に殴られた。
生まれて初めて親に殴られた。
でも、それはしつけのためでも喧嘩でもなくだった。
言葉を失って頬に走る痛みに恐怖を植えつけられた。
「成のことは殴りたくないんだよ。
父さんの言ってることは分かるよな?
後で、構ってやるから今は出てきなさい。」
神様なんて信じねえと思った瞬間だった。