Hurly-Burly 5 【完】

走ってく最中男が追ってきたのに手を引いてくれる

男の子は始終楽しげだった。

「お前、怖くねぇの?」

「何で、怖いんだ?」

「だってよ、気味悪かっただろ。変な人って感じだっただろ。

学校の先生がよく言ってただろ。」

「・・・・・お前をほっとけるわけないだろ?」

「何でだよ?」

俺は何の関係もなかったじゃんか。

「馨がお前のこと話してた。馨の友達なら俺にも

関係あるから・・・・・・・泣くなよ。」

「・・・泣いてねぇよ!」

「・・・・・・・・・・・・」

「何で、あんなところ居たんだよ?」

「馨が今日様子変だったって言うから

俺も変だと思ってたからどうしたんだって聞こうと・・」

コラ待てっと叫んでる男の声が聞こえて、

怖くなって震えた。

「お前、寒いのか?」

「ち、ちが」

「今日は、カイロ持ってねぇんだ。ちょっと、待ってろ。」

「えっ!?」

後ろの男の声なんてシカトして公園に入って、

キョロキョロする男の子に何してんだよって思いながら

背後に迫ってくる男の声に怯えた。

ガサガサ音が聞こえてくるけど暗くて分からない。

しばらくすると、そこらじゅうに葉っぱを付けて

戻ってきた手に猫が抱えられてた。

「桃太郎だ、これを持ってれば温まる。」

「・・・・・・・探してたのか?」

「ん?猫嫌いなのか?」

「す、好きだけど!いいのか、俺・・・」

「寒いんだろ?ジャンバーの中に入れてりゃ温まる。」

「・・・・・・お、おう。」

「ナル、こっちだ。」

公園から出る時にまた手を引かれた。

俺の名前なんて聞いてこなかったのに。

俺も言わなかったのに何で――――知ってんだよ?

「どうした、まだ寒いのか?」

寒くて震えてんじゃねよって言いたかった。

俺は怖くて震えてんだって言いたかった。

言葉にするのは難しくてずっと誰にも言えなかった。

言いたくなかったのか言えなかったのかすら分からない。

弱いところなんて誰にも言えるわけなかった。

だから、今回も言えないんじゃないかって思った。

それなのに、昔から優しいちぃーに言えた。

「怖いんだよ、アイツ追ってきて殴られるかもしれないだろ!」

言葉にした途端また涙が決壊した。

それを、何も言わずに服の裾で拭ってくれた。

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