Hurly-Burly 5 【完】

猫がにゃーと言いながらジャンバーの

チャックのところから顔を出す。

「・・・・・やっぱり、桃太郎返せ。」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「にゃあ」

ぷいっと顔を背けて俺の服の中に戻っていった。

「・・・・・・涙、引っ込んだ?」

「・・・・・・お前、変わったヤツだな。」

「そうか?」

不思議と怖い気持ちなんてどっかに吹っ飛んでた。

「・・・・けど、殴られたりしねぇよ。」

「代わりに殴られるのか?」

「俺が殴るんだ、ナルに嫌なことする奴は許さないからな。

お前、今日から友達だろ?友達だからお前のこと嫌な目に

遭わせた奴は全部俺がやっつけてやるから・・・・泣くなよ。」

「・・・・・・なっ、泣いてッ・・・・」

「桃太郎が泣くなって励ましてるぞ。」

「・・・・猫の言葉分かるのかッ!?」

「・・・・・・分からない、残念だ。」

しょんぼり落ち込むのを見て励まそうと思ってみた。

涙が引っ込んでよしやるぞと気合を入れた。

「俺、猫の言葉勉強してみる!」

「・・・・・・無理だ。」

「わ、分かんないだろ!やってみる。」

「猫語は存在しないらしいんだ・・・・」

「そうなのか!?」

「・・・・・・・まっさんの言うことだからな。」

どこに行くのか分かんないけど、手を引かれて

喋ってる内におっきな家に着いて驚いた。

「千治、こんな遅くまで心配しただろ!」

門のところで立ってたおじさんが駆け寄ってきた。

「遅くなった・・・・・・」

「遅くなったじゃねえだろ!子どもがこんな時間まで

遊んでちゃ駄目だって父ちゃん言ったよな?」

「・・・・・・・?」

「千治、そんな可愛い顔したって父ちゃん怒ってんだぞ!」

「稜さん、千治も悪気があったわけじゃないでしょ?

それに、伊織君と馨君」

「伊織と馨は帰ってるのか?」

「帰ってきてますよ、2人とも心配してたから

早く顔を見せてあげてね?あら、千治新しいお友達出来たのね。」

これが、初めてちぃーの家に行った日のことだった。

家に入れてもらった時は、おっかないおじさんが

頭を下げててビビったけどずっとちぃーが手を引いてくれてた。

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