Hurly-Burly 5 【完】
「あのね、京君!最近ね、新メニューが出来たらしいよ!
何かね、クルミちゃんが言ってたんだよね。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
無言のようだけどちゃんと話を聞いてくれているのを知っている。
「それでね、あたしも新メニューの開発に一役買おうかと」
「甘いものは勘弁して欲しい・・・・」
京君が明らかに真っ青な顔をした。
「だよね、やっぱり、京君はあたし派だと思ってた!
馨君と伊織君もあんまり甘いの好きじゃないよね。
だから、たい焼きの中身には辛いのとかテイスト
違うの欲しいよ。ちぃ君が餡子ばっかり買ってくるのも
問題だけどもさ、あれは病気になる一歩手前よ。」
あたしの新商品提案に京君は始終無言で聞いてた。
多分、話を聞いてくれてるはずだ。
無口王子めと言いたいところだが、京君は無口
じゃないと京君じゃない気がする。
だから、あたしが必死に喋る。別に無言でも居心地
悪いわけではないものの京君から喋るというのが
奇跡に近いことだからあたしから話題を提供して
1人で喋ってる感じになってしまう。
「・・・・京君、あたし煩い?煩いかね!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
その無言、ちょ、かなり堪えます。
「煩いんだね、京君の1人の時間を邪魔してるんだね。
あたし、今から透明人間になるから気にしないでね。
何か、喋っても無視・・・してもいいからね!」
「ひよこ、誰もそんなこと言ってない・・・」
「よ、よ、良かった!あたしの命が繋がったよー!」
普段以上にあたしのお口はよく動くようになる。
「見てみて~、涌井さんだ!」
「いつ見てもカッコイイよね。」
「もう神々しい美しさだよ。」
下校の女子生徒の話題の的になってる。
ウチの京様のモテモテすげーな。
何で、そんなにモテるんだ!
あたしにも半分分けてけろ!!
だけど、京君は無表情をさらに無表情にした。
抜け目無いというか警戒しているってのがよく分かる。
だから、京君が不安にならないように気が紛れるかなって
さっきから必死になって喋ってる。
あたしのファインプレーに感謝状を誰か送ってくれ。
喋りすぎてお口がパサパサになりそうであります。