Hurly-Burly 5 【完】
あたしには縁のない話ではあるがあたしだって、
一ノ瀬を背負う身としては決意や志は似たように
到底簡単なものではなかった。
純玲さんがにっこりと微笑みながら水仙と椿の綺麗に
咲いた景色を遠くに見つめながら迷いも無く話した。
「あの人でなければ駄目だなと思ったの。
好きなタイプとか分からなくて、この人じゃなきゃ
駄目だって思える人と結婚はしたいと思ってたから、
家柄とかそういうものは全く関係なかったわ。」
純玲さんの言葉に激しく同意出来た。
あたしも好きなタイプなど分からない。
況して、人を好きになれるのかすら危うい。
だけど、母さんが父さんと結婚したのも
父さんじゃなきゃ駄目だと思ったからだと言ってた。
あたしにもいつかそんな人が出来るのではないかと
幼少期は期待を大きく持っていた。
それも儚い夢だと知ったのはもちろんあの秘書に出会ったことだ。
でも、約束だけは心に留めてる。
“あの人”と交わした約束だけはちゃんと心の奥底に眠ってる。
どんな願いだって叶えてくれた。
叶えられないことなんて何もないほどに不思議な人だった。
時々、どこか儚く見えていつか消えてしまうのではない
だろうかと思っていたら本当に居なくなってしまった。
「日和ちゃんもきっとそんな人と結婚出来るわ。」
「・・・あたしは・・・・」
結婚に夢を抱くことは止めた。
「要は自分次第だと思うの。」
「・・・・・そうですね。」
自分の意志は捨てなきゃならなくなるかもしれない。
その日が来たら全てを受け入れなきゃならないのなら
いっそのことくだらない感情は持たなくていい。
人を好きになることが障害なら全部捨ててしまえばいい。
最もあたしの場合最初から持ち合わせてなくて良かった。
「みんながそうだといいなとは思います。」
その分、この先彼らがきっとそんな人に出会える
ことを心の底から応援している。
「日和ちゃんは人の幸せを願える子なのね。」
「いえ、ただそういうかけがえのない人に出会えれば
自信がついていいのではないかなと思いまして。」
あたしにはそれが出来ないからどうかいい人が
見つかりますようにと遠くから応援してる。