王子様とビジネス乙女!
「この件は今後人を使って調べることにするよ。
手がかりは見つけてあるんだ。
写真を売るように依頼されたという生徒達もね。
すぐに解決することさ。
怖がらせてすまなかったね、レディ・カドリ。
お茶でも飲んでいくかい?」
そう言って俺は彼女にウインクしてみせた。
これでもう駒鳥みたいな少女を怯えさせずに済むだろう。
俺の言葉に彼女はしばらく押し黙っていた。
が…突然ぱっと顔を上げて、こう言い放った。
「何か損害がありましたか?」
「へ?」
「レナール殿下は今回の件で何か損害を受けられましたか?」
その顔は緊張も恥じらいもしていない。
清々しいほどに平坦な表情だった。
黒縁の奥から紫の瞳が、こちらをまっすぐ見つめている。
「何を言うんですか。
レナール殿下を勝手に盗撮して売りさばくなど、無礼にも程がある行為です」
ヨルノだった。
少女の突然の変貌に些か面食らいながらも正論を述べている。
自分では言いにくいので助かった。
だが彼女はまるで悪びれる気配がない。
「一方的に盗撮されてしまったことは、お悔やみ申し上げます。
私は犯人を存じませんが、無礼極まりない輩だなぁと思います。
しかし、こういうデータがあるんです」
そう言って少女は手帳を取り出した。
パラパラ捲りながら語り出す。
「写真の販売が始まる前と後にそれぞれ、学園でアンケートをとりました。
詳しいご説明は省きますが、学年家柄成績万遍なくバラけた男女それぞれ50人を対象としたものです。
写真販売前は女子の64%、男子の38%がレナール様に対して非常に好意的と答えました。
ところが販売後は、女子の88%、男子の56%がそう回答しています。
写真販売によって殿下の人気が向上してるんです」
「あー…、そういうアンケートをとっている時点で、自分が犯人と言っているようなものだと思うが?」
悩ましげにそう述べたヨルノに、少女は溌剌と答えた。
「アンケートはただの趣味です」
この悪びれない潔さ、ヨルノも見習うといいと思う。
「私は別に人気を上げてくれと頼んだわけではないよ」
俺は冷静に言う。
頼んでないしとんだ迷惑だ。
これ以上の女子人気はいらないというのに。
ところが。