王子様とビジネス乙女!
「なるほど。
そういう風に、君はいくつもの商売を営んでいるわけだね」
「は、はい。
大した商売じゃありませんが」
突然褒められ、戸惑い気味の少女。
「ちょっ、レナール様、いいんですか止めなくて!?」
「今彼女が言った通りさ。
無理に取り締まる必要もない」
涼しい笑顔をヨルノに返し、俺は続けた。
「レディ・カドリ。
君のことがもっと知りたくなった」
「へぁ!?」
顔をひきつらせる少女カドリ。
リアクションが面白い。
「恥ずかしながら私は商売には疎くてね。
しかしこの国の未来を背負う者として、ぜひ学んでおきたいと思うんだ。
レディ…私を君の弟子にしてくれないか?」
「ででで弟子!?」
「何言ってるんですかレナール様!
アンタの写真売りさばいてた犯人ですよ!?」
カドリも面白いが、セットで混乱してるヨルノも大概面白い。
なのでもう一押し。
俺は目を白黒させるカドリにぐっと近付き、耳元で囁いた。
「もちろんそれだけじゃない。
純粋に君に興味があるんだ…可愛いお嬢さん」
「ふぁっ、む、むむ無理です!
駄目です無理です!
全然、もう全っ然大した商売じゃないんで!
がっかりしますから!
ほんとショボショボだから後悔しますから!」
顔を真っ赤にしてカドリはスザザザーッと後ずさった。
だが逃がさない。
逃げる少女を追いかけ、俺はトドメを刺した。
「そもそも君は――俺の頼みを断れる立場にあるのかな?」
王子の命令に背ける国民はいない。
カドリはさーっと顔を青ざめ、ガクガクと頷いた。
「わッ、わかりましたっ、よよヨロシクオネガイシマス!」
「こちらこそヨロシクね、カドリ」
上機嫌に微笑む俺。
そんな俺達を眺め、疲れきった表情のヨルノがぽつりと呟いた。
「これは学園が荒れるぞ…」