ルース
「じゃあ同じ授業とってるんすね!その時返します」
あどけなさの残る顔に似つかない、低いトーンの声だった。

ミーハーという色眼鏡を通して見れば、彼は爽やかなイケメン、というブルイに入るだろう。

ほんとにいいよ、という私の言葉を押しとどめて、
それじゃ、と圭介はバスから降りていった。

※※

一旦ブームは去ったものの、都内のカフェは星の数ほどある。

私はその星の数ほどのカフェの中で、昼間はボサノバ、夜はジャズがかかる、ありきたりなカフェでアルバイトをしていた。

コーヒーが美味しくて有名になったカフェだったけれど、それに全くひけをとらないと思う紅茶の方が、私は好きだった。

夜は少し照明を落として、アルコールも出す。
服装も髪型も店の雰囲気さえ壊さなければ、比較的自由で働きやすかった。
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