キモチの欠片

ちょっと落ち着いてみようか。

よく考えてみればそれはないよね。
下着はちゃんとつけてるし、身体が重いとかいうのはない。
二日酔いで頭は痛いけど。

なに、このドラマで見たことあるような酔っぱらって気がついたら裸で男の部屋にいた、なんていうベタな展開は。

あたしは月九のヒロインじゃないんだから。


「……さみぃ」

少し目を開けた葵が手探りでシーツを引っ張る。

さみぃ、じゃないし。
ちょっとやめて欲しい、あたしの身体が丸見えになるじゃない。

ギュッとシーツを握って阻止していると葵の手が伸びてきた。
あたしの腕を引っぱり抱き寄せられ、目の前に葵の剥き出しの肌が密着する。

一気に体温が急上昇した。

咄嗟に顔を背けるとなぜかあたしの頭を胸板に押し付ける。


ギャッ、やーめーてー!

葵の温もりを直接肌に感じ心臓がドクン、と跳ねる。

まさか誰かと間違えているんじゃ……。
そう考えたら胸がチクリと痛んだ。
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