キモチの欠片


落ち着かなくて膝の上で手を握り締め目の前の電話に視線を落とした。

どうしよう、どうしようと心の中で何度も呟く。透明人間になれたらいいのに、なんてバカな考えが浮かんでくる。

唾を何回ものみ込んでいるとあたしの前に人影ができる。

当然、その人物が誰かっていうのは見なくても分かる。

往生際が悪いとは思うけど、自分の目で確認するのが怖い。
ギュッと両手の拳を握る。



「こら、柚音っ」


香苗先輩に腕をつつかれ顎でホラッと合図をされる。


ふぅ、と目を閉じて息を吐き覚悟を決めてゆっくりと顔をあげると―――葵が真っ直ぐあたしを見つめていた。



そんなあたしを見て葵はフッと口元を緩めて笑う。


「おはよう、ゆず」


何事もなかったかのようにいつも通り挨拶してきた。

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