キモチの欠片

ハンカチを出そうとバッグの中を探していたら、遠藤さんが綺麗なお手拭きを差し出してきた。

「はい、どうぞ」

よく周りを見てるんだよね、この人。


「すみません、ありがとうございます」


受け取ったお手拭きで口許を拭く。
さっきから遠藤さんに失態ばかり見られてる。


「柚音ちゃんは自然体でいいね」

ニコニコ笑いながら遠藤さんは頬杖をついてあたしをじっと見る。

ちょっとその視線が怖いかも。

アハハと愛想笑いし、目の前のカボチャのパイ包みを小皿に取り口に入れた。

うん、美味しい。
この居酒屋の料理はハズレがない。


「桜井さん、よければこれどうぞ」

「ありがとう。桐島さんは本当によく気が利くね」

桐島さんは牛すじのどて煮を小皿に取り分け、桜井さんへ手渡す。


どうやら桐島さんは葵を諦めてターゲットを変更したみたいだ。
ま、年下の男にあんなにあしらわれたら誰だってそうなるよね。
< 82 / 232 >

この作品をシェア

pagetop