キモチの欠片
ハンカチを出そうとバッグの中を探していたら、遠藤さんが綺麗なお手拭きを差し出してきた。
「はい、どうぞ」
よく周りを見てるんだよね、この人。
「すみません、ありがとうございます」
受け取ったお手拭きで口許を拭く。
さっきから遠藤さんに失態ばかり見られてる。
「柚音ちゃんは自然体でいいね」
ニコニコ笑いながら遠藤さんは頬杖をついてあたしをじっと見る。
ちょっとその視線が怖いかも。
アハハと愛想笑いし、目の前のカボチャのパイ包みを小皿に取り口に入れた。
うん、美味しい。
この居酒屋の料理はハズレがない。
「桜井さん、よければこれどうぞ」
「ありがとう。桐島さんは本当によく気が利くね」
桐島さんは牛すじのどて煮を小皿に取り分け、桜井さんへ手渡す。
どうやら桐島さんは葵を諦めてターゲットを変更したみたいだ。
ま、年下の男にあんなにあしらわれたら誰だってそうなるよね。