【完】『潮騒物語』


萌々子、姓は紺野。

授業のあと、萌々子は着替えてから別の高校に通う恋人の時岡駿太郎と落ち合い、桜木町の赤煉瓦倉庫の界隈でデートを楽しむのが、いつものコースである。

が。

ときおり駿太郎が素っ気のなさそうな顔つきをするので、

「…つまんないの?」

萌々子は訊いた。

「そんなんじゃないけど」

その洋服なんとかならないかな、と駿太郎は萌々子の格好を指摘した。

というのも。

萌々子はレースやフリルのいっぱいついたロリータと呼ばれる派手なファッションをしているのである。

「えっ?…どうして?」

萌々子が問い返すのも無理はない。

付き合いはじめてから一年あまり、いっぺんもファッションで咎められたことがなかったのである。

「ずっと我慢してたんだけどさ」

サッカー部らしい爽やかな風貌の駿太郎は困り顔でいう。

「たまに学校でからかわれたりしててさ…目撃者がいてさ。でも萌々子がいつか気づいてくれるかなと思って黙ってた」

「なにそれ…まるで私が悪いみたいじゃない」

ちょっとだけ気が短い萌々子はブスッとふくれた。



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