元カレはシェフ
目の前にはキノコのキッシュ、ポテトサラダ、オニオンスープ、メインのローストビーフ。
テーブルの上に並べられた作りたての料理に私は涙ぐむ。
「食べられる?」
首を横に振る。長い髪がパシパシと、自分を責めるように頬を叩く。
「そっか」
「……ごめんなさい」
私は、目の前のたくさんの料理を手際よく作ってくれた基樹に、感謝している。
それでも。

私は拒食症という病を抱えている。身体はゴボウのように痩せ細っていて、頬も痩けている。
きっと彼の目に、私は気持ち悪く映っている。

彼は少し考えてから、私の隣の椅子を引き、座った。
スプーンで、オニオンスープを掬い上げる。
「はい、あーん」
「え」
私は目の前に差し出されたスプーンを見つめる。スプーンには、半分ほどのスープが中で揺れている。
「一口だけ、な?」
「……うん」
頷いて、口を開く。
舌を潤すほどの僅かな量のスープが喉をおりていった。
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