元カレはシェフ
私が拒食症になったのは、今の彼氏、陸斗の何気ない一言がきっかけだった。

『おまえ、少し太ったんじゃねぇ?』

私には、今もその言葉が脳裏を巡っている。
「舞」
あらたに掬われたスープ。私は問うように基樹を見たけれど、スプーンは私の口許に上げられたまま。
私は口を開いた。
口の中に広がる玉葱の味。それが私の唾を増やしていく。
……美味しい。
当たり前だ。だって彼はフレンチレストランのシェフなのだから。
「次はローストビーフ、食べてみる?」
私は首を横に振る。
「じゃあ、キッシュ食べよっか」
首を横に振る。
「じゃ、サラダにしよう」
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