密の味~先生、教えて~
彼氏がいるのに母校に行って…


「ったく。元気だな」


教室内からグラウンドを眺めながら、先生は皮肉げに呟く。


外では生徒達が皆、それぞれ部活動に励んでいて。


私の彼もその中に溶け込んでいる。


OBなのに野球部の練習試合に参加して、後輩達とじゃれ合っていた。


あの様子だと当分戻って来ないだろう。


「先週来たばっかだぞ、アイツ」


苦笑する先生の横で――。


意識を彼にだけ向けるよう努める。


嬉しそうに素振りしている彼。


こちらに気づいて大きく手を振ってくる。


私もそれに応えた。


「……いいのかね。俺なんかと2人きりにして」


その一言で。


私の努力は無駄になった。


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