雨、スズラン、少女
 
男が人の気配に顔を上げる。

すると、通りの向こうにいたはずの女が目の前に立っていた。

見間違えかと思ったが、脇には鉢植えを抱えていた。



実は知り合いだった。

その可能性を考慮し、男が女の顔を見る。

だが、やはり見たことはない。

それよりも、男を見つめる瞳は、全ての感情を排し、ただ、慈しむためだけに存在するように感じた。

 
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