バッドエンドにさよならを

「…なあ、ちなみに、父さんの愛人の名前ってわかる?」

「ああ。忘れたいけど覚えてるよ。確か…」

俺の思い浮かぶ人物でないことを祈った。


「井上紗耶香。」


井上…。俺の思っていた人物と同じだった。でも、井上なんてたくさんいる。珍しくもない。もしかしたら名字が同じだけかもしれない。

「息子の名前は?」

「それはわからないな。」

「…そう。」

さっきのすっきりした気持ちは、この短時間で、またモヤモヤしたものに変わった。

< 109 / 294 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop