バッドエンドにさよならを

「さっきから眉毛が0.3ミリ上がったり、目の下の筋肉が微妙に動いてる。井上はちゃんと聞こえてるよ。」

「鹿島お前…」

「向こうの病院にいるときよりは全体的に顔の筋肉が動いてるように見える。だいぶ回復してるよ。」

冷静に言う鹿島。

天才かこいつ。

中井と二宮はぽかーんと鹿島を見ていた。

「お前ら毎日井上んとこ来てるの?」

「あ、うん。」

「そのおかげだな。井上はきっともうすぐ目を覚ますよ。あ、ほら眉毛動いた。」

1ミリ以下の眉毛の動きなんて俺には判断できなかった。

「井上、何を迷ってるか知らねえけど、起きたいんだったら起きていいんだぞ。俺にはいろんな後ろ盾があるんだ。博士のじいちゃんも、警察の父さんも、敏腕弁護士も、民族・宗教学のスペシャリストも宇宙人研究家も、ノーベル賞受賞者も、芥川賞あと一歩の作家も、みんな知り合いだ。お前の人生を阻害するやつから守ることもできる。何も恐れる必要はないぞ。」

よくわからない根拠だが、鹿島がかっこよく見えた。

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