隣の彼の恋愛事情
「紅!異動するって本当?」

総務の早紀にはすでに情報が筒抜けのようで、デスクまで走ってきたのか、前髪が分かれて、おでこが全開だった。

「うん。サラリーマンはつらいね。」

「なんだか、元気がなかったから心配だったんだけど、異動なんて平気?」

早紀の優しさに胸がじんとする。

(最近感情の起伏が激しいな)

「平気平気!どこいってもやること同じだし。」

笑顔を返したが、上手に笑えていなかったのが早紀にはお見通しだった。

「紅から何も言ってこないから、何も聞かなかったけど話せるようになったら私にも話してね。」

「大丈夫だよ!それに異動っていってもここから近いじゃん。ランチは無理だけど、週末はまた飲みに行こうね。」

早紀に話せないわけではないけど、今はまだ上手く話せそうにない。

急な異動で餞別も買えないからと、私の大好きなお菓子をデスクに山盛り置いて行ってくれた。
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