隣の彼の恋愛事情
「はいってそれだけ?他にあるだろ?」

眉を寄せて睨みがちに言われた。

「あのーえーっとその。私もあの・・・好き―――――――」

私が決死の思いで言葉を紡ぎだそうとしたその時、アイツのシートベルトの外れる音がして、次の瞬間には私の鼻先にアイツの綺麗な顔が近付いてきていた。

「目閉じろよ。」

アイツがそう言った瞬間―――

想像していたよりも熱いアイツの唇が私の唇に重なっていた。

そして 私はゆっくり目を閉じた。

(どうか私の好きがアイツに伝わりますように)

そう祈りながら。

アイツの隣から必死で逃げていた私。でも今、この瞬間 私はアイツの一番近くにいた。

それはきっと、私の心が強くそう願っていたから。
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