隣の彼の恋愛事情
おいしい食事とお酒をご馳走になった私は、まだ電車があるからと駅に向かって歩こうとしたけど、アイツに無理やりタクシーに押し込められた。

「送ってもらわなくてもよかったのに。」
走り出したタクシーがオフィス街の夜の並木道を通っていた。

「いいんだよ。お前だって一応戸籍上は女なんだから。世の中もの好きも多いから。」

(戸籍上って……)

「それに、お前に何かあったら、下僕がいなくなって俺が困る。」

(あ、そういうことね)

「それはそれはありがとうございます」
イヤミたっぷりにお礼を言った。

そうこうしていると、マンションに到着したので私はタクシーを降りた。

「今日はありがとうございました。おいしかったし……それに……」

「それに?」

「楽しかったです。」
思わず正直に私の口からお礼の言葉が出た。

あまりに素直な私に一瞬驚いた顔を見せたアイツ。

「どーいたしまして。また連れて行ってやるよ。」

そう言って極上スマイルを浮かべた。
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