隣の彼の恋愛事情
エントランスを抜けて、エレベーターホールへ向かおうとしていた時に、脇にいけてある花に目がとまった。

(ちょっと、形が崩れてきてるな……)

このお花はきっと総務の誰かがいけているんだろうけど、ちょっと形が崩れていた。

「こっそり直しちゃおう~」
ひとりつぶやき、何本か花を抜いて剣山へ挿し直しをする。

私の実家は実は結構大きな花屋で、近くにある華道の家元宅に毎日お花を収めている。
そのつながりで、私も多少見れる程度には華道の心得がある。

鼻歌まじりに、花を生けていると後ろから声をかけられ、ビクッとした。

「そんなこと今してると、朝のミーティングに遅刻しますよ。」
持っていた日経新聞であくびを隠している三浦さんだった。

「えっ?もうそんな時間……」
腕時計を確認すると結構ギリギリ!

「待ってください!」

すでにエレベーターに乗り込んでいる三浦さんに声をかけて、素早く乗り込んだ。
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