椿ノ華
『ああ、簡潔に言った方がいいか?
お前があいつを選ぶなら壱を傷付ける、と言っているんだ』
「…何処まで卑劣なんですか」
『俺に従え。南十字が成瀬川を潰すのなんて造作も無い』
「……」
『一晩だけ時間をやる』
切られた電話口からは、断裂的な機械音が鳴り。
「…最低」
憎しみを込めた言葉は、葵には言っても意味が無いだろう。
だけど、気持ちはもう、決めていた。
何より大切なものを守ろうと。
例えこの身を犠牲にしても。