椿ノ華



壱は背中を向けて、英字の新聞に視線を移す。


「…私、弱いんです」

「……」

「私は、私が傍に居る事で…葵じゃなく彼を選んだ事で、

彼が傷付くのを見ている勇気はありません。

支えるなんて格好のいい事も、言えない」

「……」


聞いているのか、分からないけれど。

それでも、言葉を紡ぐ。


「だけど私が離れる事で、必要以上に彼が傷付かないって言うなら。

私は消える事を選びます。葵は、きっと約束を破らないから」

「……」

「圭さんも、全部忘れてください。

私の事は見なかった事にして、私の言葉も忘れてください」



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