椿ノ華



「…え…?」


時間が止まった気がして。

何を言われたか理解するのに時間が掛かった。


「建前上は、成瀬川ホテルと星野グループの提携、だとか…」

「…そう、ですか…」

「…過ぎた事を申しました。失礼致します」


深くお辞儀をして、庭から去っていく篠山。


「…こん、やく」


呟いた瞬間、涙が流れた。


「…っふ、うぁ…っ」


殺し切れない声が、唇の隙間から漏れる。



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