椿ノ華



祖父の死が近付いているかもしれないのに、
冷徹な態度を崩さない葵。


「寂しい、ですね」

「寂しい?」

「だって、葵さんにとっては親代わりでしょう?」

「……」

「私にとっても、親の様な人です。

知らなかった父を教えてくれて、こうして家族まで与えてくれた」

「…俺は、そうは思っていない」

「どうしてですか?」

「祖父らしい事がどういう事なのか、具体的には知らない。

だが、俺と祖父さんの関係が普通の祖父と孫でなかった事くらいは分かる。

俺にとってあの人は、偉大な経営者。

いつか自分が跡を継ぐ。それだけだった」



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