椿ノ華
愛しい人に抱きしめて貰えない体を、自分で抱き締めて。
あれからもう、二年間壱に触れていない。
パーティーで顔を合わせる事はあっても、
葵と二人の会話をただ俯いて聞いているだけ。
「…私に、傷付く権利なんて…無い、わね…」
「待ってる」とすら、答えられなかったのだから。
―・・・
「お帰りなさい、葵さん」
「ああ、ただいま」
一週間程ぶりに、屋敷に帰った葵を笑顔で迎えた。
「祖父さんの具合は?」
「…良くないわ。お医者さんにも、
そろそろ覚悟して…と言われました」
「そうか」