椿ノ華



「…私、も…私も、お祖父様に引き取られて、

知らなかった父を教えて頂いて、

一度は失ってしまった家族を与えて頂いて…

とても感謝しています。今、とても幸せです」


涙に濡れた目で微笑むと、


「…幸せに…」


その言葉を遺して、啓一郎は目を閉じた。

握っていた手から力が抜けるのが分かる。


「…おじい、さま…」


堪えていた涙が、ぼろぼろと流れた。



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