椿ノ華
啓一郎の後悔も、
葵の想いも、
紫野の忠誠も。
知って良かった真実も、
知らない方が良かったのではないかと思ってしまう真実も。
椿は全てを受け止めた。
そして今、心から愛する人と、幸せに過ごしている。
「ねえ、壱さん」
「ん?」
「春になって、桜が満開になったら…
この子が生まれたら、みんなで、
あの桜の木の下でお花見でもしましょうか」
「ああ、いいね。そうしよう」
葵に手を引かれ、再び追いかけっこに夢中になる壱に思わず笑みを溢し。
膝で開いていた本の片隅に、小さく文字を連ねた。
―「今、とても幸せです。貴方も、やり直せていますか?あの頃を」
