椿ノ華



「ねぇ!じゃあさ、今日…」

「椿さん」


珠里の声と重なって聞こえた、透き通る様な低い声。

聞き慣れた葵のものとは違う。


「…壱さん…?」

「はは、うん。良かった、探したんだ」

「私を…ですか?」

「うん。今日は洋服なんだね。髪も下ろしてる」


壱はするりと椿の髪に触れ、そして唇を落とす。


「似合ってる」


極上の笑みに、思わず体が強ばった。



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