明日ここにいる君へ




部屋のチャイムを鳴らしても、やっぱり悠仁は…出ない。



ドアノブに手を掛けると……



「……開いてる…。」



鍵はかかっていない。




「お邪魔します!」



勢いよく扉を開けて、遠慮なしでズカズカと家に上がりこむ。




「……悠仁ッ!!」



部屋の扉を開けたそこには。



ベッドに横たわる……


彼の姿。




「ちょっ…、大丈夫?!」


慌てて駆け寄って、彼の体に触れる。




「……全然大丈夫」


気怠そうに…彼はうっすらと目を開けた。



「体…あつい。熱は?」



「さあ。」



「はあ?計ってないの?」



「家に体温計ないからなー、ま、寝てれば平気」



「……。わかった。なら…今買ってくるよ。熱の他に症状は?」



「寒い」



「…熱、まだ上がるね。」


「喉が痛い」


「だから食欲なかったんだ。馬鹿だなあ、今朝からこうなの?」



「……。昨日の夜から」



「薬は?」


「…薬キライ。」



「そういう問題?何か飲んだ方が…。」



「薬は、ない。」



「………。アンタん家、一体どうなってんのよ…。」



「……さー?」




「…………。頭冷やすものは?ハンドタオルとか小さめのタオルでもいいけど」



「……。あっちのラックに入ってる」



「借りるよ?」



「うん。」



「ついでに氷も勝手にもらう。」



「……ん。」




冷凍室がどこかがわからずに…適当に、扉を開く。




「…………。」


大きな冷蔵庫に、雑然とした中身。


弁当に使ったであろう食材と、生鮮食品が他に少々。

一人暮らし用の冷蔵庫でも…十分に足りてしまうんじゃなかろうか。

「買い物前…なのかな」


扉を閉めて、キッチンを見渡す。
戸棚の食器も、調理器具も、目に入る場所には必要最小限の数。

男性が好むようなシンプルなインテリアたち。




「あ。氷、氷…」

これまた少量の氷をボウルにあけて、氷水を作ると…そこにタオルを浸して、ギュッと固く絞った。





「…冷えピ〇買ってくるまでこれで我慢して。」



仰向けに寝る悠仁の額の上に、タオルを乗せた。



「……気持ちいい」




僅かに漏らした笑みに、少し安堵する。




浅い呼吸……。苦しいのかな。



「………じゃあ…、薬買って来るから。」





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