明日ここにいる君へ
マンションの入口で、部屋番号を押す。
1回、
2回…と呼び出しボタンを押すけれど、
反応が……ない。
「まさか…倒れてるんじゃあ…!!」
慌ててスマホを取り出して、彼の名前を探すけれど……
「あれ……、ない?」
今更ながら……番号すら交換していないことに気づく。
これまでスマホの必要性をあまり感じていなかったのに………最新機種。
やたらと登録された友人の番号にライン。
ロクに見もしないしないくせに、ダウンロードしているアプリの数々。
フォローしている友だちのSNSアカウントに反応したことも…ほとんどない。
「肝心な時に…、役にも立たないなんて。何やってんの、私…」
大きく大きくため息ついて。
3度目の正直。
部屋番号をゆっくり正確に押して、
緊張からか、少し震える人差し指で…
呼び出しボタンを押す。
しばらくして。
『……ハイ。』
覇気のない声が、狭い空間に…響き渡った。
「いた!悠仁!」
私は設置されたカメラを見つめて…怒鳴りつけた。
『声デカイって。…何?』
「『何?』じゃないよ、こっちは心配して来たのに!」
『………。』
「……黙らないでよ。柄じゃないって言いたいんでしょ?」
『うん。七世、学校は?』
「サボった。てか、ねえ…、そっちに行ってもいい?」
『………。』
「具合…悪いんでしょ?長居しないから。だから……行ってもいい?」
プツリ、と音声が切れて。
目の前のドアが開く。
これは……『いい』って事だよね?
私は意を決して、足を踏み入れる。
ドアが閉まるその音を背中で聞いて、
それから……
エレベーターへと向かって、走り出した。